加西市内の算数・数学担当者、および希望者を対象に富田小学校で『教科指導講座(算数)』が下記のとおり開催されました。
日程
- 日 時:令和7年9月10日(水)13:00~16:30
- 参加者:算数担当者・数学担当者、希望者
- 内 容:テーマ:協働的な学びにより 考えを深め合う 算数の授業づくり
- 公開授業:単元「たし算とひき算のひっ算(2)」
- 授業者:古角 健太朗 教諭
- 講 師:兵庫教育大学教授 加藤 久恵 氏
授業の様子


研修の様子
- 講師:兵庫教育大学教授 加藤 久恵 氏


加藤久恵氏の指導のポイント
1.活動の意図の明確化
- 授業での活動(操作など)は、子どもにどのような思考を促したいのかを教師が明確に意識し、それが起こるよう工夫することが重要。
- 子どもの発達段階や学習内容の特質に応じて活動を考える必要がある。
2.多様な表現の関連付け
- 図、操作、アルゴリズム表(言語的表現)、記号など、多様な表現を互いに関連付けて考えることで理解が深まる。
- 特に言語的表現を使う際は、ほかの表現とリンクさせることが求められる。
3.図と操作の役割の理解
- 図は結果が見えにくいが、思考のプロセスを可視化するのに役立つ。
- 操作は結果が分かりやすい反面、思考のプロセスが見えにくくなることがある。
- 位を下げていく過程を理解させることが重要であり、単に答えを出すことが目的ではない。
4.アルゴリズム表の適切な活用
- アルゴリズム表(言語的表現)は難しい概念のため、単なる暗唱ではなく、具体物の操作などと関連させながら読み上げさせるなど、複数の表現を組み合わせて活用させることが肝要。
- 単なる暗唱は「お経のように喋る」ことになり、深い理解にはつながらない。
5.位取り概念の段階的な形成
- 2桁から3桁への繰り上がり・繰り下がりは、抽象的な位取り概念の理解が必要であり、大きなギャップがある。
- お金などの具体物から始め、次第に位置によって価値が変わることを理解させるような教材(数え棒など)へ移行させる工夫が有効。
- 「10のまとまり」の意味を理解させることは、将来的な数学的理解(2進数など)にもつながる。
6.説明活動の質の向上
- 教える側(説明する側):相手の「なぜ?」や「え?」といった否定的な反応を引き出し、それに応えようと工夫することで自身の理解が深まる。
- 教えられる側(援助を求める側):受け身ではなく、主体的に援助を求める(具体的な質問)こと、そして実際に問題解決に使う(演習)ことが理解を深める。
7.子どもの「ラクをしたい」心理への対応
- 子どもはラクな方法を選びがちなので、いかにラクをさせずに深く考えさせる状況を授業中に設定するかが重要。
8.振り返り活動の具体性
- 「〇〇さんの説明が分かりやすかった」というだけでなく、「〇〇さんの説明のこの点が、具体的にどう分かりやすかったか」を記述させることで、分かりやすい説明の要素を子ども自身が理解できるように促す。
- 低学年では、一度に多くのことを求めず、まずは認知したことを書かせ、その後に評価を加えるなど段階的な指導が効果的。
9.グループ編成と課題設定の工夫
- 常に同じ子どもが教えたり教えられたりする状況を避けるため、課題の種類を変えることで教える側と教えられる側が入れ替わる機会を作る。
- 意図的に「できる子ばかり」や「喋らない子ばかり」のグループを作ることで、聞く力を養ったり、主体的な発言を促したりする場を創出することも有効。
所感(学校教育課教育企画専門員)
今回の指導助言を受けて、子どもの思考を深めることの重要性を再認識しました。特に、具体物を使った操作や、意図的な問いかけを通して、子ども自身が「なぜそうなるのか」を考える場面を工夫する必要があると感じました。
アルゴリズム表は有効なツールですが、単なる暗唱ではなく、ほかの表現(具体物や図)と関連させながら、子どもが能動的に活用することで、より効果的に思考の過程を可視化できると理解しました。
また、「繰り下がり」などの数学的用語の定着や、位取りの概念形成を段階的に行うことの重要性も改めて認識し、今後の指導につながる有意義な研修会となりました。